昨年末、そして先週金曜にDJ JINさんのDJを生で聴いた。
共に、選ばれた曲、前後の関連性、オーディエンスへの提案と挑発(笑)が素晴らしく、踊らせ屋としてのDJの本領を発揮しつつもその物語性、構成力は、選曲家としての高い能力を知らしめる極上のプレイだった。
金曜のラストには、その場にいた黒田卓也氏の曲で締めるというサプライズ&サービスも!
今回、DJ JINさんが、二度目の登場となるのに際し、改めてDJと選曲について考えてみた。
DJとは、オーディエンスを前にしてその反応に対応し即興で曲を選び続けて行く行為のことである。
そして、その行為を実行する職業の呼び名でもある。
一方、オーディエンスを前提としない曲の抽出と曲順の決定という仕事もある。
ファッションショーや店内BGM、ブランドの為のプレイリストetc
こちらは"選曲"という呼ばれているが、僕は、DJも"曲の抽出"と"曲順の決定"という意味においては選曲行為であると考えている。
違いは、目の前にいる人の有無。
厳密に言うとコミュニケーションの有無。
どちらが上とか下ではなく似ているけれど別の行為なのである。
(個人的にはDJも選曲家と呼んでも差し支えないと思っている。
ただ、選曲家のイメージが静的であるのに対し、DJのそれはより動的ではあるけれど)。
ちなみに、DJの作るノンストップ・ミックスには3種類あって、
① 現場でDJプレイを録音したもの
② 自宅やスタジオで録音しているが、DJとして現場を想定したもの
③ 躍らせるためではなく聴く事を前提にしたもの
に分類できる。
理想は①だけれど、実は、それぞれに良さがあると思う。
①ならではのライブ感(即興にしかない面白さが疑似体験出来るしね)②と③は、いけばなや箱庭的な構成美が楽しめるだろうし(試行錯誤出来るが故の質の向上も)、③に関しては、ダンサブルではないもののDJの音楽的な背景が垣間見れたりもするし、時に縛りがない分自由度が高いこともある(DJプレイのファンにとってそれが満足できるものであるかは別として)。
随分遠回しになったが、DJ JINさんの今回のノンストップ・ミックスは、②でありながら、①に限りなく近く、同時に③の要素もあるという優れモノだ。
つまり、彼は、DJという感覚的であり、肉感的な存在であると同時に選曲家という論理的で知的な性質を兼ね備えているのだ。
勿論、現場で録音したものではないからThe Roomで彼のプレイを体験して頂かないと彼の中にある①〜③までの要素を全て味わったことにはならない。
厳密には(笑)。
ちなみに、USBだけを使うDJも増えて来た今、自宅で曲順を選んでそのまま現場で流すDJがいると聞いた。
即興で曲順を決めなければDJとは言えない。
その即興の試練を体験していない者が正しい選曲を実践出来るとは思えない。
何故なら、曲を抽出する為のフィルターの存在を理解していないからだ。
詳しくは僕の著作『DJ選曲術』、『フィルター思考』にて(謝)。
と言う訳で、今回も聴く人を魅了するであろうDJ JINワールドをご堪能あれ!
毎週日曜夕方4時からはInterFM897で、『The Room Radio』を宜しくお願いします。
沖野修也
DJ JIN (RHYMESTER / breakthrough)
日本を代表するヒップホップ・グループ、ライムスターのDJ/プロデューサー。
ファンク/ソウル/ジャズなど幅広い音楽への深い理解に基づくモダンなサウンド・プロダクションと、時代/ジャンルを横断しつつ常に高品質なグルーヴ感溢れるアナログ・レコード・オンリーのクラブ・プレイで人気。
また、世界中のクラブ・アーティストとクロスオーヴァーするDJ/プロデューサー集団〈breakthrough〉も主宰し、国内外のミュージック・ラヴァーから揺るぎない評価を獲得。近年では、日本が世界に誇る人力ダンス・ミュージック・バンド=cro-magnonとのフューチャー・ファンク・コラボ〈Cro-Magnon-Jin〉や、自身のDJスタイルを落とし込んだミックスCD『Music Journey』シリーズのヒットなども話題。
さらに、JFN系列で全国にオンエアされているウィークリーFM音楽番組「Joint & Jam」は好評につき放送開始から11年目に突入。
豊潤な音楽的〈軸〉が一切ぶれることなく、実に幅広い層にアピールし続けられている稀有なアーティストのひとり。
https://www.instagram.com/__dj_jin__/
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4/11(日)4pm - 5pm
DJ: DJ JIN (RHYMESTER / breakthrough)
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