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【Innovater’s Talk 】Voicy緒方×三戸 Vol.3「起業に失敗なんてない」

前回は、Voicyが「ユーザーファーストではないサービス設計にしている理由」というお話をお伝えしましたが、今回は「起業に失敗なんてない」というお話をお伝えしたいと思います。

この記事はFMラジオ、InterFMで毎週日曜夜8時半からお送りしている番組ビジプロで放送された内容と、未公開部分を併せて記事化しています。ビジプロは、サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさいなどの書籍や、個人M&A塾サラリーマンが会社を買うサロンで知られる事業投資家の三戸政和が、さまざまな分野の先駆者をゲストに招いて話を聞き、起業や個人M&Aなどで、新たな一歩を踏み出そうとしているサラリーマンを後押しする番組です。番組は三戸さんとの対談ですが、記事はゲストのひとり語り風に再構成しています。

音声アプリVoicyでは、ノーカット版「ビジプロ」を聴けますので、こちらもお楽しみください。

価値を創造する力~ビジネスに必要な力❶

ビジネスには、稼ぐためのものと、世の中に変化や価値を生むためのものがあります。その差は大きいです。僕はもともと会計士をやっていたので、いわゆる稼ぐためのビジネスをやっていたんですが、そういうビジネスには飽きました。いまは世の中のパイや価値を増やすビジネスに大きく舵を切っています。誰かの懐にあるパイを奪うのではなく、いままでにはないビジネスを作って、社会のパイ自体を大きくしたいと思っています。 

そういうビジネスで成功するために必要な力ということで3つあげるとすれば、1つ目は「価値を創造する力」です。世の中の人が喜ぶサービスを作り出す力ですね。 それには人を喜ばせる能力がすごく大事になると思います。多くの人は、自分の周りにいる人をどう喜ばせたらいいか、わからないと思います。家族が欲しいものすらなかなかわからないですから、ましてや、他人がどんなことで喜ぶかなんて、思いもつかないでしょう。 

たとえば公園があるとして、そこに何を持っていけば人は喜ぶのか。屋台を作ったらいいのか、ボールを持ってくるだけで楽しめるのか。そういう人を喜ばせるものを考えられるのが価値を創造する力です。その力がないと、そもそもビジネスを始めることが出来ませんから、すごく大事な力になります。 

巻き込む力~ビジネスに必要な力❷

人が喜ぶ事業を作れたとして、次はその事業を一緒にやってくれる人が必要になります。その事業にどんどん人を巻き込んでいく「巻き込む力」が2つ目に必要な力です。 僕が作ったひとつの価値にほかの人が参加してくれたり、さらには「これを付け加えればもっと価値が広がるよ」と言って一緒にやってくれる。そのように、ほかの人たちを巻き込んでいく力が巻き込む力です。 

Voicyを始めた当初は、誰も知らないサービスだったわけですが、西野亮廣さんや家入一真(CAMPFIRE創業者)さんが配信者になってくれました。家入さんには、お会いしたときに僕が音声プラットフォームをやっていますと話したら、家入さんが「ラジオ好きなんですよ」と言うので、「家入さんが話すところ、絶対みんな聞きたいと思いますよ、とりあえず一回やってみてください」みたいな感じで誘いました。

 そして、家入さんの配信を聞いて、はあちゅうさんが入って来てくれた。そうすると、ブロガーがしゃべると声がかわいいとか、聞きやすいと評判になって、多くの人が入ってきた。声の魅力を顕在化させる人が現れたら、オセロの色が変わるように一気に変わっていったのです。 

Voicyは西野さんや家入さんなどの著名人にどれだけお金を積んでいるのか、とよく聞かれるんですが、僕は彼らに、配信してもらうためのお金を払ったことはありません。 僕らが大事だと考えているのは、配信者に、配信をやりたいと思ってもらい、やってよかったと思ってもらうことです。

そのためにはVoicyの配信のメリットを明確化する必要があります。Voicyのメリットはなんといっても、世の中に発信するメディアの中で、最も低労力、低コストで出来るところです。どんなに忙しい人でもちょっとの隙間時間で出来ます。忙しくて魅力的な人ほど、それが刺さるんだと思います。 

楽しむ力~ビジネスに必要な力❸

3つ目の必要な力は「楽しむ力」です。価値は作った、ほかの人も巻き込んで広がりつつあるとなったら、あとは自分が楽しむことです。楽しんでいる人を見ると、人は一緒にやりたいと思うものです。

なので、僕自身がVoicyを一番使っていて、音声の世界はこんなに面白いんですよ、こんなに喜んで聞いてくれる人がいますよ、あなたが入ったらもっとすごいですよという風に、日々、伝えています。 起業は苦だとか、我慢とハードシングス(きつい試練。著名ベンチャーキャピタリストのホロウィッツが書いた本の題名でもある)ばかりだとか言われますけど、そんなこと、言ってやっている人はいないですよね。

「起業は崖から飛び降りて、落ちるまでに飛行機を組み立てるようなものだ(ビジネスSNSリンクトインの創業者リード・ホフマンの言葉)」と言う人もいますが、そんなことを言う人も楽しそうにやっています。 本人が楽しそうにやっているから、その楽しむ力で人を巻き込む力が生まれて、自分の作っている価値創造も広がっていくことになる。3つの力は連動するんです。

失敗なんてない

僕は、もともと会計士をやっていて、弁護士とお坊さんと医者だけを相手に仕事をして、ゴルフに行って遊べていればいいと思っていた人間です。その頃は、全然、仕事の面白さもわかっていませんでした。でもたくさんの起業家に触発されて、いまではその頃とは正反対に、仕事の面白さを知りましたし、どんどんリスクも取っています。 でも世の中をみると、仕事を楽しんでいる人は少ないし、リスクを取る人生を歩んでいる人も少ない。

僕はビジネスも野球も同じだと思うんです。ビジネスを野球と置き換えてみればわかりますが、失敗するのがいやだからビジネスでリスクは取りたくないというのは、負けるのが嫌だから野球はやらないというのと同じことなんです。 

でも野球って負けないためにやるものじゃないじゃないですか。負けても終わりじゃないし、負けたら、もう1回試合に出たらいい。1点も入れられずに優勝するなんて絶対に無理だし、1年目で勝てなかったら2年目で勝負したらいい。失点があったらそこから学んで、次はもっと勝とうと思えば強くなれます。 ビジネスも同じです。そもそも優勝する人なんてちょっとしかいないんですから、優勝だけが目的ではありません。

でもなぜか仕事はみんな、優勝しかないみたいな感じだし、負けたくないからやらない。甲子園優勝するんだったら野球をやるけど、優勝しなかったらどうすればいいんですかって、問い自体が変ですよね。 

みんな楽しいことがしたいはずなのに、仕事だけは出来るだけ楽しもうとしないのも変です。仕事だって出来るだけ楽しかったら得だと思うんですけど、とにかくリスクを取りたくないから、面白くなくてもいいからやれることをやろうという人ばかりです。 

人生の最後に自分の伝記を書くとしたら、自分は何もせずに死にました、僕は出来るだけ楽をして死にました、健康にだけ気を使って死にましたみたいな、そんなリスクを取らない人生もありかもしれないけど、僕はやっぱり、人生でいろんなことに挑戦したなとか、野球で甲子園を目指すように仕事も頑張ったなと言えることが価値だと気付いたんです。

だから、負けるのが嫌だからビジネスでリスクを取りにいかないのではなく、負けたけど、今回は1点取れてよかったとか、次は3回戦までいけるかなと思えるようになりました。もちろん失敗した瞬間はめちゃくちゃ凹んでいるんですけど、ほとんどのことを失敗だと思わなくなりましたね。 

組織作りをなめていた~「失敗図鑑」

とはいえ、致命的だったという失敗もあります。僕は多くの人に喜んでもらうためには、事業と良いサービスを作ればそれでいいと初めは考えていたんです。でもそれを世の中に広げていくにはたくさんの人が必要でした。事業と良いサービスを作っても、それだけではみんなついてこなかった。組織論をなめていたんです。 

僕がその事業で何を目指しているのかをちゃんと説明出来ず、僕の意識と、組織で働く人の意識にはずれがありました。僕には働く人の気持ちがわからず、彼らの不安や不満に対処することも出来ませんでした。みんなをハッピーにしきれるだけの器が僕になかったんです。それが理由で、組織の人が半分に減ったこともありました。

 それから、僕は普段、すごい辛口で、ずけずけ言うのが大好きで、それを喜んでくれる人も多いんですが、トップである僕が組織の中でそれをやってしまうと、発言が強いですから、傷つく人がいるんです。僕としてはちょっといじっただけという認識なのに、その人は大きく傷つくという、そういうところでも、かなり失敗しています。 それで一時期、丸くなったんですが、そうなると今度は、誰もついてこないんですね。社員の顔色を伺っている社長の下で働きたいなんて、みんな思っていないんです。

だからいまは逆に、そういう失敗を踏まえつつも、とにかく社長の自分が誰よりもハードワークであることを見せようという感じになってきました。 僕はそもそも、自分が起業するとは思っていませんでしたし、家族は全員サラリーマンで、社長がどういうマインドセットなのかを知らずに起業をしたので、その部分では苦労しました。

起業の初めはなかなか思い至りませんが、一定以上、社員を増やす事業をするのだったら大切なのはほとんど人で、事業を作ること以上に、人と組織を作ることが大事になります。そのためには働く人の気持ちをわからないといけないし、それがわからない人にとっては、大きな事業をするのは大変だと思います。 

仕事を人に任せられる?

ユニクロの柳井正さんが社長を任せたのにまた戻ってきたことについて、世間には「人に任せられないのか」と非難する人がいましたが、僕はマンガの主人公は変わるべきじゃないと思っています。ドラゴンボールの主人公はあくまでも悟空で、悟飯に交代しますということはありえない。

やっぱり、そこまでやってきた歴史を見ている人が一番いい意思決定をするし、ちゃんと未来を見ているんです。それに他の人がやっていけるほど、競争相手もぬくぬくしてないんです。 人に任せられるビジネスというのは、既存産業とか競合とか、ルールがある程度わかっているビジネスの場合だと思います。

世界的に、道なき道に線路を引いて、新しい価値を生んでいる大企業では、亡くなった人以外、全員、トップから降りていません。GAFAは全部そうですし、日本のトップの孫さん(孫正義:ソフトバンク)も柳井さんも、三木谷さん(三木谷浩史:楽天)も、永守さん(永守重信:日本電産)も誰も辞めていないんです。 

日本の中堅どころの会社では、ほかの人に仕事を任せることが大事だという人が多いんですが、それでは世界で一番にはなれないと思います。どんな事業かによりますが、世界を変えるぐらいの事業を目指す会社は、社長が第一級の戦士でやり続け、社員にはついて来いというスタンスでやるのが当然だと思いますし、僕自身、そちら側だと思っています。 

背中を押してもらわないと独立できないやつはやるな

最後に、独立を目指している人に一言、言うとしたら、「背中を押してもらえないと独立できないならやるな」と言いたいですね。独立出来る人は自分で動きます。「いざやろう」という気持ちを作らないと独立へ動き出せない人は、言い方が悪いかもしれませんが、おそらく独立出来ないレベルのマインドセットしかないんだと思います。最初のハードルを越えられないならそもそもやらない方がいいでしょう。 

中途半端に起業が増えると、優秀なエンジニアがCTO(chief technical officer=最高技術責任者)という地位につられて、中途半端な会社に取られることも良くないです。いまでさえ、日本は優秀な人が散らばり過ぎなんです。日本企業が世界に勝つんだったら、すごくイケてる会社に優秀な人材がもっと集まった方がいいと思っています。 独立したいんだったら、本気でやってくれということです。自分のサービスを使ってくれる人は、その人の人生の時間をそのサービスに費やしてくれるんです。

ということは、サービスを作る側の人間は、自分のサービスにほかの人の人生を巻き込む責任を背負っているということです。それなのに、やる覚悟も決まっていない、おそるおそるやっている人のサービスなんて、それに費やす時間がもったいないし、使ってくれる人に対しても失礼になると思います。

3回にわたってお伝えしてきたVoicy緒方さんのお話ですが、次回は、体験をギフトするソウ・エクスペリエンスの西村さんがゲストにお越しいただいた時のお話をお伝えしたいと思います。

これからもInterFMビジプロにゲスト出演してくださった方々が語ってくださった内容をまとめていきますので、noteのフォローもよろしくお願いします。

※この記事は、日曜20時30分からInterFMにて放送しているサラリーマンの挑戦を後押しするベンチャービジネス番組ビジプロの内容をまとめています。

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